自費出版でフィクションを書くとは(純文学編)

フィクションとは、虚構すなわち嘘である。奇想天外のファンタジーやSFものは、一番自由奔放に嘘が書けるが、いい作品を書くのは難しい。他人である読者を自分の世界に引き込むのは、至難の業である。童話は、感性と想像力の勝負である。売上高や接待のことばかり考えていた社会人が、気持ちを切り替えてかわいい動物たちの物語を紡ぐのはリフレッシュになるかもしれない。

小説の題材はたくさんある。日頃思うこと、心揺さぶられたこと、人生そのものなど。直接言いたくない心の秘密を客体化して表現できるし、苦手な相手をデフォルメしてフィクションの世界で徹底的にやっつけることができる。小説は綿密な調査や下調べがなくても記憶のストックだけで書くことができる。誰でも手軽に書くことができる。しかし、いい小説というものはなかなか書けない。日常の何気ない事柄を題材に、そこに絡む人々の生きざまや触れ合い、それぞれの心模様を核に描いていく純文学系。下調べはあまり必要ない。嘘も書けるし、適当に書くことができる。しかし、一般不特定の読者の共感はなかなか得ることができないのである。純文学系の小説の難しいところは、登場人物の言動や周辺、背景の描写を通して、著者の心を直接読者に伝えなければならない点である。